アンティークな楽器の並ぶ展示会

例えば、目の前に1つのヴァイオリンが置かれているとして、そこで「このヴァイオリンは美しいですか?」と、聞かれたとします。私はそのとき、もしこのヴァイオリンが丁寧に磨かれていて、それに輝きが見えたとしても、決して美しいと答えることはできないと思います。なぜなら、ヴァイオリンに限らず、楽器というものは見た目ではなく、音でその美しさを感じるものだと思うからです。たとえ、見た目はボロボロで廃れてしまっていたとしても、そこから奏でられる音が美しければ、必ず聴いた人の心を揺さぶるものだと思います。その反対に、どれだけ綺麗な見た目であったとしても、そこから奏でられる音が良いとは限りません。このように、楽器の価値というのは、見た目だけでは判断のつかないものだと思います。私がこれを身に染みて感じたのは、ある1つの展示会に行ったときのことでした。それは、とても音楽好きな友人に誘われて行ったもので、多くのアンティークな楽器のそろう展示会でした。

日本国内だけではなく、海外からも集められたという大きな展示会で、そこにはたくさんの楽器が並べられていました。アンティークというだけあって、中には弦の切れてしまっているアコースティックギターであったり、形のひん曲がってしまっているトライアングル、鍵盤にヒビの入ってしまっているピアノオルガンなどもあったのですが、そのどれもが音楽界で有名な方々が過去に手にされてきたということで、こういった展示会に並べられていたのです。

もちろん、きちんと今でも音を奏でられる楽器も並べられていましたが、展示会という場であるため、決してその音を聴くことはできませんでした。友人はこの展示会に対して、「とても良いものを見ることができた」と、大いに満足げにしていたのですが、私は心残りがしてなりませんでした。それらの楽器が、過去に音楽界で有名な人の手に触れていて、当時はその音を奏でていたかもしれませんが、今実際にその音を聴いたわけではなく、楽器そのものの良さというものがわからなかったからです。楽器の展示会に行ったのはこれが初めてだったのですが、楽器というのは、音でその良さを感じたいものだと思ってしまいました。音楽好きな人にはいいかもしれませんが、私にはこういった展示会よりも、演奏会や音楽発表会のほうが好みだと思います。音楽の楽しみ方は、人それぞれのものだと実感してしまった出来事でした。

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